南の国の風と共に

南の国の教会で働いてきたミッショナリーのメモ

宣記13【1期】家族での渡航の準備

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 2007年春に単身でA国に渡り、言語を学習しつつ、生活する基盤を整えた上で、家族を迎えるため秋に一旦帰国しました。今回は、家族で海外に渡航するための準備などについて、一般的な話が主になりますが、思い出しながら書きます。

1.荷物の準備

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 多くの航空会社では、エコノミーチケットで、1人7キロまでの手荷物を機内持ち込みすることができ、1人20キロまでの荷物を無料で預けることができます。(航空会社また渡航地などによっては重量も変わり、また個数制限もあります。また格安航空会社では預け荷物にも料金が設定されています。)

 私達が家族5人で渡航する場合、100キロまでの荷物を空港カウンターで預けることが多くの場合できました。今もそうですが、出発前には現地に運びたいものを全部段ボール箱に入れて、体重計を使って制限ぎりぎりまで重さをはかります。

 それをまとめて出発時に空港カウンターに持っていくのですが、5人で計100キロの荷物となると、大きな段ボール箱が数箱になり、まるでちょっとした引っ越しのようになります。カウンターの列に並んでいても他の乗客の荷物に比べてかなり目立ったことを覚えています。

 今まで日本出発時に出発カウンターで預けた荷物は数多くありますが、乗り継ぎ地を経て、問題なくA国まで無事に届いたことは感謝でした。預けた荷物が目的地に届かなかった、また途中で紛失したという話も知人の宣教師からはよく聞きます。1回だけA国到着時に届かなかったこと(ロストバゲージ)がありましたが、夕方には別便でA国に届きましたので、荷物の紛失で悩むことはありませんでした。

 日本の調味料などは、重さ制限に余裕がある限り持っていくようにしました。当時、現地の店で日本の調味料は日本の数倍の値段がするほど高価なものでした。醤油などの液体は重いのですが、海苔やふりかけなどは軽く嵩張らないので、持っていく時に重宝しました。

 運ぶ荷物の中で一番重いのは、実は書籍です。宣教地での働きのために、なるべく多くの書籍を持っていきたかったのですが、その重さゆえに、選んで持って行かざるを得ませんでした。やがて電子書籍の時代に入り、重い本を海外に直接持っていくことから解放されたことは大変助かりました。

 また子供の勉強に関連する本なども同様に重いのですが、特に日本語に関する本は現地では手に入らないので、優先して日本から持っていくようにしました。子供が幼い時の読み聞かせの絵本などは、現地に住んでおられた日本人から何冊も頂いたりし、大変助かりました。本の読み聞かせは、幼い子供の海外における日本語習得のために、とても大事だと聞いていますし、私達もそう思います。

 日本の薬もいくつか持っていきました。日本では医者の処方せんが無ければ入手できないような強い薬も、現地では普通に薬局で売られていますので、時々、病や怪我の症状をネットで調べ、薬の成分を書いた紙を現地の薬局に行って買うこともありました。これは何があっても自己責任です。かぜ薬や胃薬などは日本の飲みなれたものを持って行くようにしました。日本で普通に売られている虫刺されの薬も、意外に現地には無く、日本の薬が重宝しました。

 しかし、結局のところ、現地で長く住むためにはいかに現地で売られているものを使うかという視点が大事かと思います。日本から持って行けるものには限りがあります。全く同じでないにしても、何か代用できるものを現地で探していかなくてはなりません。感謝なことに、A国では子供のオムツから電化製品まで、様々なものが現地の店で売られていました。実際電化製品などは、日本とA国とでは電圧が違うので、現地で売られているものを購入した方が良いのです。また調味料にしても、入手しにくい日本のものよりも入手しやすい現地のものを使う時に、新たな味付けを発見することもあります。

 海外での生活は母国の生活のようにはいきません。「郷に入っては郷に」という言葉もありますが、現地で売られているものを使う中で、実は日本のものよりも使いやすかったという経験は多くあるのです。

 

2.チケットの準備

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 たちがA国に遣わされた2007年ごろからLCC(格安航空会社)の全盛期に入り、その影響もあって、航空券の価格はどんどんと下がっていきました。日本とA国の往復航空券で1人3万円未満の時もありました。日本国内の空港までの移動費の方が高いのではと思ったほどです。アメリカ人宣教師の知人は、家族でA国とアメリカを往復するのに、多額の費用を要すると話していましたので、同じアジア圏内での移動という点では、恵まれていたと思います。昔よりも海外との距離がいろんな意味で近くなった時代でした。

 当時私が所属していた宣教団体では、かつて4年間の宣教地での働きをひとつの区切りとし、その後1年間の帰国と定めていたように記憶しています。昔、飛行機での渡航がまだ難しく、船で海外へ渡航していた時代は、本国と宣教地との往復だけで数か月を要したこともありました。そのような時代では頻繁な国境を越える行き来というのは大変で、4年間に1年間という区切りがあったように思います。しかし、世界の行き来はこの数十年間、比較的にスムーズになりました。私の知人のフィリピン人宣教師も、A国とフィリピンを数か月単位で行き来しての働きをしていました。そのような時代には、そのような時代に合わせた宣教の方法があるのでしょう。

  しかし、2020年に突然やってきた新型コロナウイルスの感染拡大により、今までのそのような状況は大きく変化してしまいました。かつて一世を風靡した格安航空会社は経営が厳しくなり、航空券の価格も上昇傾向です。またかつてのような国境を越えやすい時代に戻ることがあるのかどうかは分かりません。しかし状況はどうであれ、また国内外を問わず、一人一人のクリスチャンへの宣教に対する神の呼びかけは、海外に行きやすい時代も、また行きにくい時代も、制限があったとしても、またなかったとしても、いつの時代も変わらないことを思います。

 

3.予防接種などの準備

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 渡航にいくつかの予防接種を受けました。短期渡航ではあまり必要がなくても、長期渡航の場合はリスクも増えるため、破傷風、肝炎、日本脳炎などいくつかの接種が勧められています。(行く国によって予防接種の内容も異なります。)これも大切な準備のひとつかと思います。

 出発前、一日のうちに左手に2本、右手に1本。口から1つの液体ワクチン。合わせて4つのワクチン接種を同時に受けました。体の中をいくつかのワクチンが駆け巡っている感じがしました。他にも受けていた方が良い予防接種はいくつかあったのですが、日本で全部を受けることは難しく、必要に応じて現地で受けることになります。

 現地で働く知人の宣教師で、腸チフスにかかった方もいます。現地には日本にはない多くの病があります。事前に予防接種を受けていたら、感染しないか、感染しても軽症ですむ病もありますので、感染防止としての接種を受けることは大事なことだと考えます。

 現地でよく流行するデング熱に関しては、まだ効果的なワクチンはありません。対処療法のみです。デング熱はA国では人口の多い街で多発し、マラリヤは田舎に多いと聞きます。多くの知人宣教師また家族が現地で蚊によるデング熱に感染しています。A国ではデング熱は子どもがよくかかり、成人はあまり発症しません。幼い時にかかるため免疫ができるのでしょう。私達が教会で関わっていた子供達も何回か感染し、何度も祈らされました。外国人はデング熱の免疫がないため、成人でもかかりやすいリスクがあります。デング熱自体は、1週間ほど高熱に苦しんだ後に治ると聞きますが、もしデング出血熱という病にかかると命の危険があります。私たちは10年以上現地で住む中で、まだはっきりと分かる形でデング熱に感染したことはないのですが、いつ感染してもおかしくない病ですので、外出時に蚊よけ薬は必ず使用しています。

 ある地方の宣教師を訪問した時のことです。その宣教師の家は、かなりローカルな場所にあるのですが、虫よけ薬を塗っているかと聞かれ、その時はたまたま塗っておらず、塗っていないと答えると真剣な顔で注意されたことがあります。聞くと、その宣教師は子供さんも含め、デング熱にかかったことがあり、大変な思いをされたとのことでした。

 どんなに注意をしていてもかかる病気はあります。しかし、虫よけを塗るなどの行為やワクチンなどによって防げる病気もあります。もし外国で病気にかかれば、言葉の面で意思疎通の難しさもありますし、回復まで多くの時間を要します。防げる病に関しては、ワクチンなどによって防ぐということは良いことだと思います。しかし、最終的に信頼しているのはワクチンではなく神様です。いつも現地で家族が病気から守られるように、健康が支えられるように神様におゆだねし、祈る日々です。