南の国の風と共に

南の国の教会で働いてきたミッショナリーのメモ

宣記37【2期】聞かれる祈り

 「祈られていることを決して忘れることのないように。」あるベテラン宣教師の一言は今でも心に強く残っています。パウロも聖書の中で「祈りによって協力してくれれば、神は私たちを救い出してくださいます。」と書いています。

 祈りには力があります。祈りは様々な出来事に変化をもたらすのです。振り返る時に、多くの方々の祈りによって、A国現地での働きが進められてきたことを思います。宣教の働きの中で、祈りの力というものを強く実感させられてきました。

1.近所の女の子家族との出会い

 しい集会所で、日曜学校が始まり、また現地語礼拝も始まるようになりました。その中で、集会所のそばに住んでいた小学生の女の子が毎週集会に来るようになりました。そんなある日、聖書を自宅から持ってきた女の子。「あれ、どうして聖書を持っているの?」と聞くと、「ひいおばあちゃんがアメリカに住んでて、アメリカでクリスチャンなの」と。「へえ、そうだったんだ。」

 おそらくその女の子のひいおばあちゃん、遠く離れたアメリカからA国に住んでいる親族のためにも祈っておられるんだろうなと想像しました。そして、ひ孫が私たちの教会に来て福音を聞き、福音を受け入れたことをもし知ることがあったら、ひいおばあちゃんはさぞかし嬉しいことだろうとも思いました。

 そのような出来事があって後、その女の子のお母さんも私たちの教会の特別な集会に何回か来てくださり、福音を聞いてくださり、反応してくださったことは感謝なことでした。

 新しい集会所があった場所は、以前にも書きましたが、場所探しが難航していた中で、神様の導きによってようやく与えられた場所でした。もしかしたら、その背後には、女の子のひいおばあちゃんの祈りもあったのかもしれない。その中で、神様は私達を新しい集会所があった場所に導かれ、近くに住んでいたこの女の子家族に出会い、女の子家族が福音を聞けるように導いてくださったのかもしれない。これは想像にすぎませんが、もしそうだとしたら、神様が私たちを用いてくださったことは本当に嬉しいことです。

 神様は私達にとって見知らぬ誰かの祈りによって私達を動かされることもある。私たちの周りの人たちとの出会いも、また様々な出来事も、見知らぬどなたかの祈りによってみこころのままに導かれることがある。そのことを改めて感じさせられた出来事でした。祈りは聞かれるのです。そして神は祈りによって、私たちも知らないどなたかを動かされることがあるのです。

2.祈りによる励まし

 る日、A国内で車を運転していて、車の調子が急に悪くなったことがありました。車を一旦停めましたが、周りに何もない所で、もしこのまま車が動かなくなったらどうしようと不安が襲ってきました。その時、そのタイミングで電話がかかってきたのです。知人の牧師からでした。何気ない挨拶の電話でしたが、その牧師は最後にこう言いました。「先生、祈っていますよ。」その言葉は不安にかられていた私に力を与えてくれました。その後、車も何事もなく目的地まで運転することができました。

 宣教地にいると、そのようなことを何度も経験しました。事あるたびに、祈られていると実感しました。ハプニングや問題が起きて、気落ちしている時に、力を失っている時に、どなたからの連絡がふとあったりします。メールがあったり、訪問があったりします。その方は何も意識していなくても、その方の行動によって励まされたということがありました。パウロもこのように書いています。

「気落ちした者を慰めてくださる神は、テトスが来たことで私たちを慰めてくださいました。(Ⅱコリント7章)」

 神様は多くの場合、他者を通して私たちを助けてくださいます。祈りを用いられます。そして他者や祈りを通して私たちを励ましてくださるのです。

3.祈りによる力

 でも思い出すのは、新しい集会所に移って5年目に行われた特別集会でした。ご近所の方々、また今まで関係を築いてきた方々をお誘いし、特に教会に行くのは初めてという方を対象とした集会でした。

 その集会のために首都から知人の牧師をお招きしました。様々な計画をし、準備をして、あと1週間というタイミングで、突然数名の警察官が教会に踏み込んできたのです。不審な外国人が大勢集まっているという噂を耳にしての事情聴取でした。そんな事実は何も無いのですが、2日間かけて聴取は行われました。

 2日目は家族や子供たちも警察のもとに呼ばれました。突然のことでしたので驚き、家族も巻き込まれたことに、大変不安に思いましたが、母教会をはじめ、このことを知った日本のクリスチャンの方々の祈りも背後にあり、最終的に警察側の誤解は解け、お互い笑顔での解放となりました。

 そして特別集会の当日、首都からゲスト説教者が無事に到着しました。その晩に集会は予定されていました。しかし、夕方からの大雨により、長時間停電し集会所は真っ暗。また至る所の道も冠水し危険な状態でした。来られる方々の安全のために急きょ集会を中止し、翌日に延期することにしました。その時にも、母教会、また多くの日本の方々の祈りがありました。

 延期となった翌日も大雨が降りましたが、集会前に雨はぴたっと止みました。また集会中に、前日同様に急に停電したのですが、ちょうどゲスト説教者の説教の前に電気は復旧したのです。不思議なタイミングでした。

 説教者によって福音が分かりやすく語られ、応答する方々も起こされたことは感謝でした。そして同時に、多くのハプニングがあった中でも、神様の守りがあったこと。それは多くの方々によって祈られた祈りの力でもあることを改めて思いました。

 これらのことは、いつまでたっても決して忘れることのできない思い出です。改めて、A国での働きのために祈ってくださっていた皆様に心から感謝します。

 

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